蟲食べる日々

昆虫食を中心に記事を書いていきます。

虫入りにんじんしりしりを作る

※本記事は昆虫の画像がふんだんに出てきます。昆虫が苦手な方はご注意ください。

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沖縄の家庭料理、にんじんしりしり

さて、二本目の記事です。今回の内容は、にんじんしりしりwithワームでございます。

かねてより、ミルワームをにんじんしりしりや青椒肉絲に使ってみたいなと思っており、ようやく実現にこぎつけましたので、その調理過程を書かせていただこうと思います。初めての昆虫料理実践。

今回素材調達に利用したのは、TAKEOというサイトです。昆虫食に縁のない方は知らないかと思われますが、食料としての昆虫の通販を行っております。

ここで今回購入したのが、こちらでございます。

takeo.tokyo

幼虫詰め合わせ。あまりにも潔く、むしろ清々しく思える商品名です。

加熱・乾燥させたミルワーム(チャイロコメノゴミムシダマシ等幼虫)、スーパーワーム(ツヤケシオオゴミムシダマシ幼虫)、シルクワーム(蚕蛹)、サゴワーム(サゴゾウムシ幼虫)が入っております。

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幼虫ミックスの袋。シンプルでいいですね。

宇宙食感をほのかに漂わせるデザイン。かっこいい。

なお、袋にはMixed pupaeとありますが、pupa(蛹)は1種類しかなく、他3種はすべてlarva(幼虫)です。Mixed larvaeとすべきなのではないでしょうか……?

袋を開けてみると、さらに袋が出てきました。詰まってます。

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蟲蟲していますね。

袋を開ける前から漂ってくる香り。詳しく言えば、香ばしく、土臭くもまたどこかナッツのようでもある……そう、あたかもカカオのようなスパイシーな香ばしさ。

期待が高まります。

とりあえず、袋を開けて敷いたティッシュに中身を広げてみる。一瞬にして白い床は飼育ケースと化し、大小さまざまの虫が今にも動き出さんとしています。圧倒的蟲感。

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右から順に、サゴワーム、蚕、スーパーワーム、ミルワーム

調理前に、これらについて味見。サゴワームは一匹しか入っていなかったので、調理には用いません。

ミルワーム

加熱による香ばしさが感じられるが、特段の味は見受けられない。強いて言えば、火が通り過ぎて多少苦みが出ている気がします。小さいので、スーパーワーム程に殻が口に残る感じはしません。見た目もひじきのようで、そこまで抵抗感を与えないのもいいですね。

・スーパーワーム

ザ・ミルワームって感じの見た目です。水分が抜けてこのサイズなので、改めてジャイアンミルワームの異名に納得せざるを得ません。ミルワーム同様かなり軽いのですが、脚の感触はしっかり感じられます。さすがキチン質、親指に6つの脚が刺さる。ここら辺は人によって拒否反応を起こしてしまうかもしれませんね。

ミルワームと同じでサクサクなのですが、今回のスーパーワームは曰く言い難いにおいがします。なんとか例えるとすれば、そう、飼い葉のようなにおい……。なお、調理過程でだし汁と共に炒めているとにおいはかなり弱くなりました。そのままスナックとして食べるよりかは、他の調理法がいいかもしれません。

注)昆虫は採った時期や調理以前に食べたもの、鮮度等のコンディションにより味が容易に変わります。ですから、必ずしもこのようなにおいがするわけではありません。

においはひとまずとして、味自体は良好です。基本的には無味に近いが、ほのかに小魚のような、いかにもな虫の肉の風味があります。魚になった気分です。

ただ、問題点として、ミルワーム以上に殻が口に残る感触があります。特に頭殻は固めなので、手間はかかりますが頭を予め砕いておくと一層美味しく頂けるとおもいます。

・蚕

皆さんご存知、蚕の蛹ですね。加熱だけでなく乾燥もされています。日本であれば蛹粉コースを辿るところでしょうか。

繭を湯がくことにより、セリシンが溶け、フィブロインが繊維として取れます。これが生糸であり、後に絹糸となるものですね。僕の祖母のその育て親が女工として製糸場で働いていたと聞きます。茹で殺された蛹を持ち帰り醤油で煮しめることもしばしばあったとか。祖母曰く、とても臭くて半口とて食えたもんじゃなかった、とのこと。茹でてから時間が経っているので、桑のにおいに加え脂肪分の酸化もあって臭みが出てしまったのでしょう。

なお、ヤママユガ(天蚕)の繭から同様にして取り出した薄緑色の繊維は天蚕糸と呼ばれます。テンサンシのほか、テグスイトとも読みますね。目に優しいその色合い、光沢はまさしく天上の織物とすら言えそうです。絹より更に高級です。

また、クジャクヤママユはかの有名なヘルマン・ヘッセが著「少年の日の思い出」にもでてきますね。そう、虫はあらゆるところで、あらゆる形で我々とかかわってくるのです。

申し訳ない、話が脱線してしまいました。

さて、立ち返って、この蛹。すでに未来を感じさせる羽が見受けられますね。いよいよ蛾らしい姿に変態するのです。生命のダイナミズムを感じます。まあ、蚕は飛べないんですけれどもね。幼虫の頃からある腹横の黒点が残っているのも目立ちます。キュートですね。

食べた感じとしては、非常にサクサク。塩だけで案外いけますね。こちらも調理に用いたのですが、そのまま食べた方がよかったと思います。どうにも水分を含んでくると、スーパーワームとは逆ににおいが増してしまったんですね。桑らしい臭みが鼻を突き抜けます。煮つけるならば、蚕はやはり佃煮、大和煮でしょう。新鮮な蚕蛹は茹でてやれば豆乳のような、うまく乾燥させればそら豆のような香りであると聞きます。いつか、採りたての蚕も食してみたいものです。

・サゴワーム

サゴゾウムシの幼虫。ゾウムシの類は幼虫がでっぷりと太っていていかにも食べ応えがありそうでいいですね。乾燥させてあるはずなのですが、手に取るとずっしりと重い!

頭殻はいかめしく黒光りし、まさに甲虫なのだという印象を受けます。頭をとってやれば、初心者でも案外いけるのではないでしょうか。

重量感ある図体を手に乗せ口に放り込む。一口、噛み締める。触った感じ硬質だった外角は意外にも簡単につぶれ、乾燥させてなおしっとりとした肉が口内にゆっくり広がっていく。ん? なんだこのにおいは? これは……。昆虫ゼリー(南国仕様)だ!

噛み締めた途端、揮発するかの如くして鼻に突き抜けたるはヤシのにおい。まんま食性の影響を受けている。口内が南国と化す。そこに間もなく訪れるは土のにおい。香ばしく焼かれているから、そのせいだろう。ああ、懐かしい。これは小学4年生の時に飼っていたアルキデスヒラタクワガタの飼育ケースのにおいだ……!(なお、ヒラタクワガタを交尾させようとしたものの、朝にはオスに噛み切られた無残なメスの姿がそこにあった)

飼育マットの土臭さを恐ろしいほどに香ばしさが再現している。それだけではない。おそらく脂肪と血糖によるほのかな甘みさえあるのだ。まさに昆虫ゼリー。ヤシ風の昆虫ゼリー。乾燥させてなおこれほどの風味があるのだ。幼虫をそのまま茹でか焼きで食べればあるいはずいぶんおいしいのではなかろうか。いつの日か東南アジアの現地マーケットに行きたい、そう思わざるを得なくなりました。

 

ちょっと長くなってしまいましたが、昆虫スナックそのままの味をレビューしたところで、本題のにんじんしりしりに入っていこうと思います。

 

にんじんしりしりと言えば、ネットでよく知られている例の沖縄の家庭料理ですね。スライサーなどで人参をしりしり(=繊切り)してやり、ごま油や出汁などで味付けして炒めたものです。人参の他、青いパパイヤで作っても美味しいらしいですね。この細切りの人参がワームな感じだったので、昆虫を混ぜようと思いつきました。本来は人参の他に卵やシーチキンを入れたりすることが多いようですが、ここではシーチキンではなく前述の幼虫達を用いました。次回以降作るときは、においの強い蚕はまた別の調理を施そうと思います。そうすると、実質的ににんじんしりしりwithミルワームとなりますね。

 

それでは以下、調理の様子。

材料(一人前~二人前)

・人参:1本

・卵:1個

・幼虫ミックス:15g(1袋)

・ごま油:大さじ1.5杯

・めんつゆ:大さじ1杯程度

・顆粒出汁:2g

1.人参をしりしり

洗って泥を落とし、皮を削いだ人参をスライサーにかけます。今回は以下のスライサーを用意しました。

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近所のスーパーに売られていました。

サラダを美味しく簡単に。ののじサラダおろし。

ハンディタイプで使いやすいですね。ただ、すりおろす際に結構人参が飛び散るので、付属の受け皿をつけるか下に大きめのボウルを受けておくといいでしょう。

2.人参を炒める

フライパンにごま油を敷き、温まったら人参を入れます。少し炒めると人参が油を吸い、加熱されて黄みがかってきます。人参は油を吸いやすいので、大目に油を投じてもいいでしょう。全体にしっとり、しんなりとするまで炒ます。

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人参を炒めています。

3.調味料と虫を投入

人参に火が通ったら、いよいよ虫ちゃんの投入です。予め塩が振られてあるのでややつゆの量を少なめにしました。あるいはめんつゆではなく白出汁と醤油でもいいかと思います。めんつゆと顆粒出汁、虫を投入(先にも触れましたが、蚕は除いたほうが風味がよくなると思います)。さっと和えて、全体に味が染みるようにします。

虫の香ばしさが混じり、どこかエスニックな雰囲気が漂ってきます。見た目にも虫料理らしさありますね。タイの厨房みたい(勝手な想像)。いいですね。

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人参の海に落とされる虫達。

4.溶き卵を加える

最後に、溶き卵を入れ素早くかき混ぜます。卵の優しい風味がごま油と出汁とマッチ。これの投入によってぐっと美味しくなります。

かき混ぜた卵が固まってきたら火を止め、皿に盛りつけます。

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鉄板の上を漂流する虫達。彼らはなされるがまま。

……さて、これにて完成。虫入りにんじんしりしり。

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普通に美味しそう。

漂うごま油と出汁のいい匂い。しなっとした人参の陰にはホカホカの卵と虫とが隠れています。幼虫の外殻のつやつや感が映えますね。

ちょうどご飯も炊けたところで、早速実食。成功だろうと失敗だろうと、材料を手に入れてから自ら食べるところまでが昆虫料理の実践です。人に捕まらなければ一層に子孫を残せていたかもしれない、そんな虫ちゃん達の命を頂きます。

まずは一口。出汁の染みた人参と卵がうまい。実にうまい。なるほどこれは家庭の味だ。次いでミルワーム達、調理によって臭みも抑えられ、サクサク食感がいいアクセントになります。そこまで味が染みているようには感じませんが、控えめな味のため気になりません。ところどころ、まだ飼い葉のような臭みが残っているスーパーワームがあったので、今後の課題としては一層均等に加熱し、また煮汁を絡ませられるようにする、というところでしょう。精進していきたいです。

蚕は一部のスーパーワーム同様に香りが強く、素朴な味わいのにんじんしりしりにはあまり合いませんでした。こちらは調理を改善というよりはむしろ、他の料理に回すべきだと考えます。少なくとも、僕の舌にはあまり相性が良くないように感ぜられました。

 

食べ終わって、総括としましては、乾燥幼虫でも調理により簡単に美味しく頂くことができ嬉しい限りです。がしかし、今回の乾燥の昆虫と未加工の昆虫とでは味や食感、香りもまた違ってきます。つまり、僕は今回の調理で対象の昆虫の特性の一面を把握しただけに過ぎません。したがって、いつか機会がありましたら、新鮮な未加工の幼虫も調理してその特性を把握していきたく思います。

また、なにも東南アジア的なテイストのみならず、今回のように昆虫は日本の料理に加えて美味しく頂くことが十分に可能です。そうした活用法を模索する上では、自ら調理してトライアンドエラーを繰り返し、昆虫の味の特性を把握することが欠かせません。昆虫食を膾炙するためにも、これからも昆虫料理に挑戦していきたいと思います。また、その過程につきましては今後もゆっくりとではありますが記事として公開していきたく思いますので、よろしくお願いします。

 

ここまでお読みいただき、誠にありがとうございました。

昆虫食が少しでも広まることを願って、記事の終わりとさせていただきます。